えぐち徹の飯塚をもっと元気にあたたかく
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***この記録はえぐち徹が聴きながら自分の感覚で備忘録としてまとめたものですので、その点をご了承の上お読み下さい。参考になれば幸いです。***

「被災地の現状とこれから」 木下黄太氏講演会

みんなで考える原発講座8
【日時】2012年05月19日(土)
【会場】イイヅカコミュニティセンター (福岡県飯塚市飯塚14-67)
【主催者】原発知っちょる会


以下講演要旨

飯塚に来るのは今日がはじめて。そのことをご了承下さい。

まず、ブログ見ていただけた方どのくらいいるのかな。見ていない方挙手を(九割近くの方が挙手)

田舎の自治体で私木下黄太の講演会があってもしらないことがほとんどなのに、これだけ知っているのに、びっくりした。

福島第一原発の事故の直後に、この事故は尋常じゃない。生命の危険が直ちに及ぶ可能性が高いと判断していた。結果論から言うと、爆発がそれまではなかったことから、「直ちに危険」とは言わないが、一定期間を経て生命の危険がある」ということは同じだ。

そのような経過を踏まえて米軍が50マイル80kmという距離を言った段階で、100km圏は避難すべきということを言った人間は少ない。私は記名で言った。私自身は取材体験の中で伝えた。

今回のテーマ、被災地の現状とあるが、被災地とはどこだろう。福島なのか、福島・宮城・岩手の3県だろうか、更には青森の一部、茨城の一部を含めた程度だろうか。私の感覚は、南東北から関東全域が被災地という認識であり、この認識を持って欲しいと言うことで講演を続けている。

東京を被災地と思いたくない人たちが多くいるが、汚染の状況を調べていくと、関東全域に留まらず、静岡東部、新潟山間、岩手は盛岡の先まで、沿岸部は宮古当たりまでは間違いなくやられている。山形も米沢あたりまでだ。非常に広範囲にわたっている。その状況を知って欲しい。

私が被爆人口と言っているのは、一定程度降下物が落ちたエリアにその当時板かたがた、3月15日、20,21日だが、日本の人口の半分5千万人が入ると思っている。

政府が何となく言っている福島の沿岸部から、中通りだけで決してない。
低線量内部被爆まで広げると、もっと多い。また線量、線量と言うが、放射性物質の降下物の量で考えるべきだ。

普通の庭土などで数百ベクレル/kg(以下「ベクレル」)規模となるエリアは汚染されているエリアだと私は認識している。それが五千万人だ。事故の後、危険だと考え、東京を離れ、関西四国でブログを書き続けた。それから一ヶ月経った頃に問い合わせが多く入り始めた。そして関東でミーティングを行った。
箱根の山間の古本屋の店主の話。お茶をチェックしたらこれだけやられていると言うことで、土壌調査の相談があった。そしてミーティングの場でこのことを話したら、墨田区で講演会をやることになり、さらに土壌調査をやろうということになった。そして7月末に検査結果が来て、8月に放射能防御プロジェクトを立ち上げ、その検査結果は、一通りネットに挙げている。

その結果について、記者会見をしたが、TBSが1分ニュースで取り上げたのと、読売新聞が数行書いただけで、他のメディアは黙殺。130箇所の調査をしたのにだ。

その検査の過程でも、数値の高さに自分のデータを認めたくない人なども出てきた。そうした状況の中で130箇所のデータを出したのにね。
これは予期できたことだった。検査の際に、いくつかの大学の研究所に検査をお願いしたいと問い合わせをしたが、帰って来た言葉は「イヤだ。それをすると国などに嫌がられる。」といった理由で断られた。

その東京の平均値が、ウクライナのキエフの値と同じ程度。

岩手の沿岸部の土壌調査も行われていない。たいしたことはないとして、がれきの広域処理の話が進んでいたが、秋田県の反対グループが相談してきて調査すると、宮古など200〜300ベクレルの汚染が普通に見つかる状況だった。私たちは100〜200ベクレル程度ではと思っていたが、場所によっては400ベクレルさえ見つかった。

がれきというものは、津波に持って行かれ、押し戻された。その後に、15日、20、21日に放射性物質が降下している。それが木片に落ちたか、土壌に落ちたかという違いだけ。がれきの数値は、土壌汚染と同様だと考えて良い。

秋田では、土壌の調査をしても100ベクレルを超える汚染を平野部で見つけるのは至難。男鹿半島で大きくても50ベクレルが出た程度、5〜10ベクレルがほとんど。大きな汚染は秋田では見つかっていない。奥羽山脈が防いでくれた。

がれきの受入、仙北市は事実上やめたようだ。でも大仙市は、「おめえらわかってんのか。小さな子ががれき見ながら小学校行ってるんだ。俺らが燃やさなくてどうする?燃やすぞ!」と市長が住民説明会で言うと、「そうだべ」と言うことになる。

がれきは小学校の通学路にはない。一箇所にまとめられていて、小学生が近づくことはない。岩手の沿岸部で数百ベクレル、宮城県内の土壌調査では平均値は950ベクレル沿岸部で1000ベクレルを超えるのは珍しくない。仙台だけ、たまたま雪が降らなかったので500ベクレル程度だ。井伏鱒二の黒い雨と同じ。周りは千ベクレル超えだ。

関東、東京はウクライナのキエフ程度。チェルノブイリの事故で被害が一番大きかったのはベラルーシ。比較的汚染が低いと言われたキエフでの健康被害が露骨に出ているのは論を待たない。このキエフと東京の汚染度が同じ程度だ。8月の調査後、追加されたデータがあり、品川区内の砂場でゼロベクレルなど砂を交換した疑いがあるものや、1万ベクレルを超えるという数字などがある。一番高く飛び出た場所は、経済産業省前の植え込みで1万ベクレルを超えている。これをどうするか悩んでいる。通常あり得ない。少したまりやすいレベル。2倍から3倍程度の濃縮だろう。この数字を入れると1000ベクレルをちょっと超える。外すと800ベクレル程度。

日本では、3月11日の原子力事故の前のセシウム濃度はどのくらいあったんだろう。事故前東京では、基準値で、0.6〜1.5ベクレル程度だった。2ベクレル以下。それが790ベクレルになっている。約800倍程度だ。

大分県竹田市は40ベクレル程度ある。九州では突出している。これは、チェルノブイリの時などに高かったところを計っているんだろう。東海村、臨海被曝事故があった東海村が60ベクレル。これが今まで日本での最高だった。ほとんどはND(未検出)だった。

日本は、世界的に見ても低いエリアだった。それが東京でさえ、800〜1000ベクレルとなった。

キエフがセシウム137だけとしても、今の23区は上だ。東側はもっと高い。江戸川区では、3000ベクレルを超える汚染が数カ所見つかった。他にもひどいエリアがある。比較的低いのは板橋区・北区・練馬区など。でも低くても200、300ベクレルある。

3500を超えた江戸川区小岩では、家の前の段差ところの砂が4万ベクレル!

同じような堆積物では、巣鴨のある施設の真横の砂が、6万ベクレルあった。この事例では、豊島区がどこかを教えろと言ってきた。その砂は、旦那と奥様が持ってきたが、結果が出て以来、旦那はノイローゼ。公共施設を運営している奥様はそんな数字をお客様に知らせられないとして旦那とケンカ。

またある場所のカーポートの屋根の砂は11万ベクレル。側溝の中にも同様の数字はいくらでもある。そうした場所に人はいられるのかどうか。避難の基準はどこにあるのか。

セシウム合算で560ベクレル程度以上が放射線の管理区域に入る。更にそれの5倍くらいになる二千数百ベクレルなどは希望すれば移住できる地域になる。松戸柏などが数千ベクレル台の汚染は普通に見つかる。堆積物だと10万を超える。

茨城南部でも同様だが熱心に調査をせず、隠蔽しようとしている。千葉市、市原市などでも千ベクレルを超える。九十九里から外房の沿岸の地域が少ない程度。

島田市で試験焼却という。しかし、この島田市は焼却する前でも数十ベクレル台の汚染はある。これを踏まえてどう考えるかはとても大切。

ベクレル・kgというのは放射線計では測れない。シンチレーション(20数万円)もしくはゲルマニウム検出器しかない。どちらにしろ精密な機械でしかはかれない。またこの

がれき、宮城のがれきだと500ベクレル程度汚染されている。岩手のがれきはそこまでない。政府が測定する時はいつも3メートル?程度離してシンチレーションカウンターで測り、そして0.1μSV(マイクロシーベルト)なので大丈夫という。しかし、これが500ベクレル程度汚染されたものでも、30cm?程度近くならないとシンチレーションカウンターでは数値が振れない。しかし放射線が危険なのは間違いない。しかし放射線の線量として反映されるのは、簡単には出ない。

がれきは、ミルフィーユのようなものであり、何層にも重なっている。その層がそれぞれ放射性物質の量が違う。ある東京23区内の200mの坂の上と下で25ベクレルと2000ベクレルの差が出た。ある環境下で平均して100や25でおおよそ同じようなレベルだったら大丈夫だが、偏って堆積している場所でなかったら2000などの数値が出たらダメだ。なぜなら、放射性物質は粒子だから、つまり大きな数字が出ると言うことは、毒のある花粉が環境のそこかしこにあるということ。このことを考えるとがれきの汚染状況は、1tあたり10数カ所して測らないと分からない。

また、セシウム137と134は分かるが、ストロンチウムなど他の放射性物質の核種は全く分からない。セシウムがこれくらいあるから他のはこれくらいあるだろうという推測でしかない。土壌にホットスポットがあるようにそこかしこに放射性物質が存在しているか分からないのががれきだ。

マイクロシーベルトやミリシーベルトというような概念で放射能のことを考えるのは間違いじゃないが、その事を過剰に言うのは、放射能の危険を見えなくする。

低線量被爆というのは、「これがすぐに10マイクロシーベルトや20じゃないから0.15だから大丈夫です。」という時に使われる言葉。「それでも低線量被爆は危険です」という学者も沢山いる。

だけど、僕は低線量被爆という言葉そのものが違うと思っている。実際に放射性物質がどの程度あるかは、線量という枠の中でどの程度が分からない。実際に放射性物質がどれだけあるかはベクレルの方がはっきりわかる。そのベクレルがどの程度あるか。一定程度、放射性物質がある環境は、生物は耐えられないとちゃんと言うべきだ。それが本質だ。

「線量の低いモノを過剰に怖がるという風潮がある」という批判があるが、妥当ではないと思う。放射線という概念はきちんと管理されている中で放射線を当てるような環境であればよいが、放射線物質が環境下に出て、吸い込む、触れるなどの体内に取り込むことがありえるこの状況でどうなるかを繰り返し実験した事例はない。広島や長崎で、出た放射性物質の量は100分の1、200分の1程度と今回より非常に小さい。今回の事故の類型事例としてあるのは、チェルノブイリだけだ。

しかし、チェルノブイリはソ連だ。ペレストロイカとはいえ、強権下だった。

私が先日招いたチェルノブイリを研究した解剖医のバンダジェフスキーは、「セシウムの影響が臓器に及んでいて危険だ、あるところまで健康被害が明確に出ている。」と書いて、そして5年間投獄されていた。

そのバンダジェフスキーは、「セシウムは甲状腺にも臓器にも、一番怖いのは心筋にも影響を与える。心臓が突然停止する」という。そして彼は、「放射線でなく粒子を考えるべきでそれを回避するしかない。」「がれきをなぜ動かすのか。焼却ではなく、動かすだけでも危険だ」という。「焼却が危険なのは当たり前。動かすだけで、危険だ。燃やすなんてクレイジーだ。」という。セシウムの沸点は600度。溶融炉であれば気化する。気化した物をバグフィルターで取れるというのが、環境省の言い分。しかし、島田市の焼却実験で出たデータを整理すると、物質の収支、排ガスの分析からどう考えてもバグフィルターを超えて出ているとしか思えないような数値が出ている。しかし、環境省は「いや、私たちの測定では出ていない」、「別の実験ではバグフィルターで九割以上取れている」という。

札幌の市長や、福岡の市長はしっかり判断し「引き受けない」と言っている。苫小牧の市長、「燃やす、燃やす」と言っていたが、今は「燃やさなくて置いていたらいいだろう」と言っているみたい。受け入れたという実績があればよいと思っている。

川崎市や、神奈川の黒岩知事も最近「やらない」と言いだした。現地で出来ることが分かってきだしたのだろう。

沖縄も「受入」と言い出していたのに最近言わなくなってきた。なぜかと聞くと、「そもそも量がないので、どうやら来ないみたい。来ないのに反対運動をしてもムダだ。」ということらしい。

実際、環境省の役人も「広域処理は東京でおしまい」と最初は言っていた。しかし、細野大臣がその流れを変えた。そして新聞などが後押しした。

しかし、環境省がちゃんと後ろ支えがないということが見えてきた。その中で無理をして広域処理する必要があるのか。更に、仙台はもちろんのこと、釜石、石巻でのめどがたってきた。汚染された地域で処理するのが一番良い。どうしても処理するというのならその自治体の責任で処理するしかない。しかし、どんどん、広域処理の数字が減ってきて、必要性がなくなってきたのではないか。

前のめりの市長が、実際のがれきがないので止まっている。その状況の中で、ばかばかしいと思っても「広域処理をやめよう」と言い続けるのは放射性物質の影響を軽く見過ぎているこの状況を変えたいからだ。

私のところには、健康被害を受けた人の情報が多く集まる。そしてその情報を数回電話して確認している。テレビや新聞は二重三重に裏を取るまで書かないと言うが、この状況の中で、二重三重に裏を取るべきだろうか。一定程度蓋然性が高かったら知らせることが悪いのだろうか。突然死の場合、臓器の放射線量を測ることを監察医は許していない。

東京23区内、突然死が今まで年間5、6ケースだったのが、この四ヶ月で二桁を超えた。また、20〜40代の男性では、3割増だという。厚生労働省は認めないけどね

板橋区内の中学校あるクラスで心電図異常が8人、25%。横浜の保育園、120人くらいの約半分にリンパの腫れ。0歳から1歳児で、機能性の心雑音が3割程度。

どうしておきるのかは分からない。

嚢胞、甲状腺機能障害が起きるなどのケースは非常に多く聞く。元々持病があった人が数値が悪化した人が関西に逃げたら良くなったとも聞く。

異型リンパ球などが珍しくない。いつ政府がこの状況を認めるのか。少なくても福島県の方々を避難させなかった菅直人の責任は重い。

この状況でがれきを西日本に持ってくることがどれだけ危険か。

この会場に避難者の方はどれだけいるのだろう?(20名弱が挙手)

支援するんだったら、九州の安全な農作物を東北へ送ろう。子どもを助けることと、がれきを燃やすことはどちらが大切なのか。

これから、移住したいという人はもっと増える。飯塚は人口が減っていて空き屋があるなら人を呼んで支えて挙げればよいじゃないか。なぜそのようなことをしないのか。

質疑応答

Q 北九州のがれき、どうしたら止められるのか。
A 週明けの市役所を万単位の人間で囲めば、1回は止まるだろう。北九州市ののめり込み方は尋常じゃない。子ども達が、運動会の準備をしている最中に試験焼却する。おかしいよね。また、福岡県民が、どれだけ本気を見せるのか。避難者がいくらやっても外様。一番やらなくてはならないのは地元の人。その方々が役所を取り囲まなくてどうする。市民検討会よりも囲むべき。それが一定数超えたくらいだったら強行するだろう。

Q 飯塚は決まっているのか。
A 議会がどうかは関係ない、市長がやるというのかどうかが決め手となる。

Q 受け入れたらどのくらいのお金になるのか
A 言われているほどには大きくない。受け入れたという実績が大事のようだ。多少のプラスはあるが、現地でやれば現地に落ちるはずのお金。

Q 埋めるという選択は取れないのか
A あり得る。現地に埋めるというのは現実的な解決策だろう。

【以上文責:江口】